御社に合った就業規則

就業規則“らしいもの”になっていませんか

私は社会保険労務士として、多くの会社の就業規則の作成(100社近いかと思います)改訂に関わってきました。
私が関与して、または外部から見聞きして、「いい会社だなあ」と思う会社は、意外にも就業規則自体はそれほど分厚くなかったかと思います。
経営者の想いが社内に浸透し、従業員もその本旨に沿って楽しく勤勉に働き、何事もなく日常業務が流れていくときに、就業規則について、いいとか悪いとかの問題はほとんど出てきません。ましてや、その厚み(条文の数)も問題になりません。

市販の就業規則ソフト、ときに無料のひながた、たくさんの条文が載っているからと言って、そのモデル・ひながたをそのまま自社に採り入れたとします(たくさん載っていればどこかしら当てはまるだろうという安易な考えで)。

しかしそれは、就業規則(らしきもの:もどき)が「ある」というだけの状態です。

就業規則を作成(改訂)するきっかけ、目的はいろいろかと思います。

  • 助成金をもらうのに就業規則が条件になっており、必要だから
  • 会社と従業員とのルールを明確にしたいから
  • 従業員間でぶれない処遇、一律の処遇、公平な評価に使いたいから
  • 会社と、働く大切な従業員たちを、かき乱すような従業員から守りたいから
  • 働き方改革がうたわれ、有給休暇5日取得は最低の義務とせかされ、さすがに作らないわけにはいかなくなったから
  • 従業員から「社長、うちの会社は就業規則もないのですか?」と詰められたから
  • 毎年法改正が行われるのに、当社の就業規則は、平成初期(ときに昭和)のもので、さすがにそのまま適用するのに無理があるはず(なのに、どの部分が古くなっているかさっぱりよくわからない)から

就業規則のひながたやモデルは、作るためのとっかかりやたたき台としては、使うべきかと思います。だってそのために本やソフトは販売をされているのですし、ましてや、社長・幹部・一般従業員らは労働法の専門家ではないのですから、何もないところから、作ることはできません。

しかし、私は、せっかく自社で作る以上は、次のようなことを心がけるべきかと考えます。

  1. 自社の実態に合った就業規則が大事です。
    会社の業歴、成長度合い(ステージ)、従業員の数、組織風土や社風が反映されるものだと思います。
  2. 会社の成長…すなわち人を引きつけられる(≒求人力につながる)就業規則が重要です。
  3. 時代に合った就業規則が大切かと思います。
    就業規則は一度作って製本してはい終わり!ではありません。これは毎年毎年の労働関係法の改正のことだけを述べているのではありません。
    その時代の、本来の自社の組織はどうあるべきなのか、Z世代・α世代といった従業員ごとの世代観、考え方の反映など、時代が進めば会社の戦略そのものも変わっていくからです。

私がこれまでの作成支援の中でわかったこと

①就業規則を作成しただけで、即→会社がよくなるということにはつながらない。

経営者の想い、会社で働く従業員安心感・不安感(会社との信頼関係)など、「就業規則というルール」よりも「先に来るべきもの」があります。
さらに、経営者と従業員(労使)が、就業規則を作る目的を理解し、今後どう運用して(どうやって守るか)いけるのかが、大事になってくることかと思います。

法的な前提

  • 「就業規則は従業員に周知すれば有効になる」
  • 「その内容が『合理的』なら最高裁判例からして、労働契約としてもOKになる」
  • 「監督署に届けておけば それでいったんは可」
  • 「従業員の意見を聞いておけばよい」 なども、もちろん必要なことですが、ただ存在しているだけの就業規則にしないためには、上記の述べたことがやはり重要になってきます。

②「企業防衛型」とか「戦略型」といった概念は、一見ひきつけられるが実は実際の会社運営には、あまりなじまない。

たしかに、就業規則上の気の利いた条文のおかげで、労使のトラブルを避けることができた事例は多いかと思います。しかし、就業規則を作る本来の意義・意味は、経営者自身が「逃げず勉強して」ある程度以上労働法を理解して、自社のより働きやすいルールを模索・整備し、運用していくことで、会社を成長させることだと思います。

私は、社長や幹部が敷居にこだわらず従業員さんと膝詰めで話ができ、コミュニケーションが取れている会社(当事務所顧問先)では、会社をゆるがす大きな労働問題にはこれまで出会ったことがありません。
 
もちろん就業規則は、労働基準法第89条や労働契約法にばっちりと書かれていますので、たとえば、つぎのようなこと

  • 就業規則の法律上の本来の意義
  • 民法、労働基準法との関係
  • 労働協約(組合との取り交わし書面)との関係
  • (個々の)労働契約との関係
  • 労働契約法、労働条件の合理性、不利益変更について
  • 実際の裁判において、弁護士や裁判官は就業規則のことをどう見てるか、就業規則の扱いはどうなのか?

は超重要ですので、次項で述べたいと思います。
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