再雇用になる従業員の給与水準をどうしたらよいか?
<同一労働・同一賃金>

びっくりするような誤解をしている方々がいらっしゃいます。

もし同じ仕事についていたら(=同一労働?)、正社員の間に賃金の差はあってはならない(同一賃金?)…という意味だと思っているのです。
さすがに無理があります。

もし、みなさんの勤続年数や経験・熟練度合いが最近入ってきた新人よりもはるかに「上」であるのに(今までの実績や評価も上なのに)、
「同じ仕事」なのだから→「同じ賃金」にしろ と言われたらおかしいと思うでしょう。

「同一労働・同一賃金」とは、そういう意味で議論されたのではありません。
正社員と同じ仕事をしている「非正規の方」、具体的には、

①(勤務時間が正社員より短い方)=パートタイマー
②(正社員と同じ労働時間を働くが有期雇用の方)=契約社員

のことです。

①②の方が「その会社の正社員さん」と同じことをしているのなら、同じ賃金を払ってくださいね、パートだからという理由だけで差別はしないでくださいね と常識的なことを述べています。

最近の最高裁判決は、定年まで長くいてくれる前提の人(主に正社員)と、長くいることにそれほど期待のできない人(主に非正規雇用)とで、「差があるのは妥当のこと」との判示し続けています(たとえば基本給・賞与・退職金の差異など)。

反対に、もし正規雇用でなくても長期雇用の期待がある方(フルタイムパートが定年までいる場合など)には、差はつけてはいけないことになるわけです。長くいてくれる期待があったのだから(正社員には支給して)パートさんには退職金ゼロなのはおかしいと言われる可能性があるということになります(「均衡」の観点からはおかしくない可能性もあります)。

さて本題ですが、定年後の賃金相場には問題点があります。

それは、給与の支給水準が「年金が60歳から支給されていた時代の制度」を前提にしているということです。年金の支給開始年齢は65歳に向けてどんどん下げられています。さらにハローワークからの「高年齢雇用継続給付」も追い打ちをかけるように2025年から段階的に下がります。

国は企業に2021年4月から「70歳までの就業確保措置」を義務づけしました。今はまだ「努力義務」ですが、平均寿命・健康年齢の統計などとにらめっこしながら、68歳くらいまで「措置義務」とする可能性なども考えられます。

60歳は「ゴール」なのではなくまだ「通過点」の時代になりつつあります。同一労働・同一賃金を遵守しつつ、生活はしていける賃金水準の提示ができないと、人手不足の時代にあっては、会社は生き残りがますます厳しくなっていきます。

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