有給休暇を「全部消化してから辞めますので」と言われた
<有給休暇>

相談員(労働局)時代に最も相談のあった質問・照会が、「退職時の有給休暇全部消化」に関するご相談だったと思います。

若年層・ミレニアム世代は、退職時に限らず「有給休暇は全部消化する! 万が一それをしにくい慣習・雰囲気の会社に勤務しても少なくとも退職時には全部消化する!」という考え方が主流かと思います。

労働基準法は「労働に関する最低条件」を定めた法律なので、有給取得も当然の権利なのですが、有給休暇をほとんど取らなかった事業主側の世代には理解できず、厚かましいとか、余計な人件費がかかると感じる方もいます。

しかし頭を切り替え、時代に追いついていかないと、少なくとも採用の際の魅力的には見劣りしていまいます。その世代は、求人票をチェックする際に、賃金水準などよりも有給休暇をきちんと取れるのかを見ている方も多いからです(むしろ賃金が高い表示だとめちゃくちゃ働かせられるかもと思い、むしろ疑義を持たれることさえあります)。

意外と知られていないのが「有給休暇の法的性格」です。一言でいえば「使用者の承認はいらない」ということです。「え!」「いらないの?」とよくびっくりされます。

労働者が有休休暇の請求=「時季指定」を行った「その瞬間に」法律行為が完結しています(このことを「形成権」と言います)。その唯一の対抗策は、使用者の「時季変更権」のみです。

すなわち「有給休暇は取っていいけど、その日は君がいないと会社の運営に支障が出るので、別の日に変更をしてもらえないか」と申入れする権利のことです。

実際は、みんながみんな「直前に」取ったら会社は混乱しますので、会社のルールである就業規則にしたがって、1週間前までなどに有休申請をして、会社からの許可(付与)をもらってから休む…というのがルーティンかと思います。

労働者のみが持つ「時季指定」の権利が、先の働き方改革により、「5日間」だけ会社にも与えられました(労働者と相談しながらの権利ですが)。

最後に、有給休暇の「買取」は禁止をされていますね。理由は健康を害することにつながる行為であり、有休自体の趣旨を損なうからです。しかし、退職したら持っていた有給休暇の権利は消えてゼロになってしまいます。どうせゼロになるものを、会社が買い取ってあげるのは会社の自由(民事的な契約行為)ということです。もちろん「買え」と労働者から言われてまで、強制される義務まではありません。

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