パワハラの「行為者」にその自覚がまったくない
<パワハラ>

わたし(代表の西山)は、顧問先からの依頼で「パワハラ防止セミナー」をよく行います。その際に、主催者(会社)には、パワハラの原因、行為者とされているその方を「一番前の席」に座って聞いてもらうよう主催者にお願いをすることが多いです。

その行為者は、社長さん本人であったり、総務部長さんであったりさまざまですが、その方に向け特に語り掛けるように意識してセミナーをします。また、その方に質問をしたり、ご意見をいただくようにもしていろいろと考えてもらいます。
さて、研修効果は期待できたのでしょうか?その方の反省のきっかけになったでしょうか?
結果は、その方に「自分がパワハラをしたという自覚」などまったくない(今日のセミナーは自分のことではない)…ことがよくわかるだけです。

意図的にいじめたのでなければ、行為者にその自覚がないのはある意味当然なのです。自覚があれば、そもそもそんな問題など起こしていないからです。

なお、「パワーハラスメント」の定義は、先ごろ、国がようやく統一をしました。

優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること。

そして、令和2年6月1日から事業主に10項目の措置義務を課しています。(中小企業は令和4年4月1日からです)

その10個をざっくり示しますと
<事業主の方針の明確化及び周知啓発>
①ハラスメントの内容、行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知すること
②行為者には厳正に対処する旨の方針と対処内容を就業規則等の文書に定め、労働者に周知すること

<相談に応じ、適切に対処するための体制整備>
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

<ハラスメントの事後の迅速かつ適切な対応>
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥速やかに、被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦事実確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
⑧再発防止に向けて措置を講じること

<併せて講ずべき措置>
⑨相談者・行為者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知するこ      と
⑩相談したこと等を理由として不利益取扱いをしてはならない旨を定め、周知すること

次に述べるセクハラとは異なり、その判断に当たり「平均的な労働者の感じ方」すなわち「同様の状況でそのような言動を受けた場合に、一般の人(労働者)が、就業する上で見過ごせないような支障が生じたと感じる」…という基準が確立しているわけではありません。
かんたんに言うと「わたし(部下)がそう感じたのだから、これはパワハラだ」とあなた(部下)が主張しても、上司が「あなた(部下)の成長のために心を鬼にして厳しい言い方、あえて罵倒したような言い方をしたのだ」と反論をされると、それが本当にパワハラだったのかを決めるのは「裁判官の世界」になります。

また、次に述べるセクハラとは異なり、パワハラには判例(最高裁判決)もまだほとんどありません。セクハラにくらべて歴史が新しいからです(ただし、国は「セクハラ」に、いろいろな意味で急速に追いつかせようとしています)。

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